宇宙人が発達検査を受けた話

約30年、私は私を宇宙人だとは思っていませんでした。

顔も特に嫌いではなく、声も特に嫌いではない。

いたって普通の人だと思って生きてきました。

 

息子が産まれ、育児をし、離婚を経験し、かけもちで色々な仕事をした結果。

私は宇宙人であることが判明しました。

 

きっかけは息子の異常な暴れっぷりでした。

しかし、「やんちゃなだけだろう」「手のかかる子だ」

くらいにしか思っていませんでした。

 

まさか息子が発達障害だなんて。

そしてまさか私も発達障害だったなんて。

 

時間はかかったけれど宇宙人か人間かを識別するテストにたどり着いた。

この検査に行き着くまでに私は他人から色々な言葉をかけられて生きた。

 

 

「顔つき、目つきが障害者みたいだよ」

アスペルガーの類の人の顔に見えるよ」

「働く前に障害者としての診断を受けたらどう?」

「君は出来ないんじゃなくてやらないだけだよ」

「お前子供殺しでニュースに出そうだなw」

「俺の知り合いも発達持ってたけど大きくなったら治ったよ、だから大丈夫」

「なんでこんな簡単なことも出来ないの?」

「マニュアル用意しなくても出来るでしょ?」

「なんで時間が守れないの?」

「なんで約束すっぽかすの?」

「どうしてこんなことも出来ないんだ」

「お前よりもアタシのほうがお前の子供育てられそうだよ」

「あなたがいてもいなくても私のクラスは回るから」

「先生もあなたの対応するの疲れるのよ。来ない方がいっそ楽だよ」

「なんでこんな人間と関わっちゃったんだろう」

発達障害の子供持った時点で親としての人生終わったも同然だよ」

Twitterに向いてない人種」

「他人から煙たがられてそう」

「お前みたいなポンコツどこも雇わないよ」

「社会人としてのルールも守れない人間が社会に出てくんな」

 

 

もっと小さなときに診断を受けられる環境で生きていたら

私は大人になってからこんなに苦労しなかったかもしれない。

 

息子は4歳でK式検査に行き着いたけど

私は28歳になってやっと「発達検査」に行き着いた。

 

「WAIS-Ⅲ」という検査だった。

 

心理士さんには、終始「カタいよ、リラックス」と言われた。

1問1問進めるたびに手元を確認して少しずつ進めた。

2時間半ほどかけてすべてのテストを終えて次の日もテストをした。

 

細かいテスト内容は書けないけれど

一般教養から専門的な言語問題、模様を考える問題や模写をした。

 

  • 全検査IQ - 様々な力を合算させた全般的な知的能力
  • 言語性IQ - 言葉を理解・表現したり言葉を考える能力
  • 動作性IQ - 視覚からの情報を理解・処理する能力

という大きなカテゴリー分けが存在しており

  1. 言語理解 - 言葉の情報や自分の持つ言葉を状況に応じて出せる能力
  2. 知覚統合 - 目から情報を取り込んで関連づける能力
  3. 作動記憶 - 頭の中で情報を保存してそれを操作できる能力
  4. 処理速度 - 簡単な作業などを正確にこなす能力

この4つに分けられた細かい特性の検査をするのがWAIS-Ⅲだった。

 

検査の数値が同一になることはほぼ無く

出た数値=自分の全て、と考えることも無く

ただ自分の特性を知るうえでとても重要なデータにはなる。

 

私の場合、作動記憶以外の数値が全て70台であり

評定は「平均下~低い」に○の記号が羅列されていた。

作動記憶のみ100を超えていた。

数値の差 (ディスクレパンシー) は35ほどだった。

 

人によっては数値が全て100を超えていたり

大差なく検査を終えているパターンも数多く存在しており

発達特性に苦しんでいる人は本当に様々なんだな、と痛感する。

 

人それぞれが生きにくさ・困りごとを感じていて

「目には見えないところで辛さを感じているんだ」と

ネットの広い世界を眺めていると感じる。

 

自閉症スペクトラム障害の傾向にあるかどうかのテストも実施された。

33点以上で自閉症の傾向あり。私の点数は45点以上だった。

50点満点の検査らしく、ほぼ満点を獲得していた。

 

私の欠点・短所・ダメなところは

  • コミュニケーション能力に異常な拒否反応があり、会話が続かない。
  • 場の雰囲気を読めず、ルールが不明確な場面で混乱する。
  • 過集中を起こし、他の作業への切り替えがうまくいかない。
  • 細かいところや誰も気が付かないところに気が付き、考えずに指摘する。
  • 人と話す際、どのように話せばいいのかわからなくなってしまう。
  • 約束は覚えているけどうまく予定をこなすことができない。
  • 人間相手になると気持ちを量ることができなくなってしまう。

以上の点から自閉症という診断が付きました。

 

ADHDテスト・ASDテストともに満点を獲得し

私は見事に宇宙人となりました。

 

小学生の頃に黒板を見られず勉強ができなかったこと

違うクラスの声が聞こえて集中力が散っていたこと

掃除の時間に雑巾を触ることすらできなかったこと

今思うと若干のLD、聴覚過敏、手先の過敏さが原因していた。

 

小学生の頃に5人もいない友人を心無い言葉で傷つけてしまったこと

その友人だと思っていた人は実は友人ではなかったこと

 

その友人にトイレに閉じ込められたことで

私は家以外のトイレが恐怖になり、その呪縛から逃れられなくて

常にトイレ内の声や音に耳が苦しくなり

大人になった今も個室内でパニックになることもしばしば。

 

中学生の頃に学校に突然行けなくなってしまったこと

家を出る準備は出来ているのにドア前で足がすくんで

その場で吐いて泣きながら行きたくないとゴネた日のこと

担任の先生と合わなくて常に暴言を吐かれたこと

「あなたがいてもいなくても私のクラスは回るから」

「あなたがいるとあなたのことも考えないといけない」

「先生の仕事増やさないでくれる?来なければいいのに」

「学校にきても何もする事ないでしょ?来なくていいよ」

私がつらいと思っていたのは

「ドアを開けた時にクラスメイトが一瞬振り向いて私を見る」

その動作がどうしても辛くて3年間を無駄にしてしまった

のちにそれは対人恐怖症(社会不安障害)という診断が付くことになる。

 

高校には行く気がなかったけれど

嫌でも前期は受けろと非常勤の先生や両親に説得され

嫌々受けた定時制の高校受験に受かってしまい

「無理だと感じたらすぐにやめよう」と思っていた

結局ずるずる通って何年も在籍した

その数年でいろいろな人との出会いと別れを経験した

小中散々な思いをしたから高校に入学した際は誰とも喋らず

授業外の休憩時間は周りの騒音から逃げるために

常にイヤホンをして「近寄るな」オーラを出していた

 

それでも授業中になると気になって話しかけてくる人もいて

その人たちと仲良くなったけれど

「なんでこんな人間と関わっちゃったんだろう」

と言われる結果に終わってしまった。

 

きっかけは「AとBの友人派閥、どちらに付くの?」

というしょうもない内容だった。

 

AとBは喧嘩しており、どちらとも共通の友人だった私は

AとBから「どちらの派閥に付くの?」と聞かれる。

 

「喧嘩は面倒だからどちらも面倒くさい」と答えたら

どちらとも離れた。次の日AとBは仲直りしていた。

私のみ離れる結果になった。

「くだらない人間関係の環境に生きてるな、私」

と思いながらも、学校は辞めなかった。

 

卒業するころには友人と呼べる人は一人もいなくて

誰とも深い関係にならないように

仲良くしていてもどこか壁があるような

そんな人間を演じてなんとか卒業した。

 

いざそんな人間が社会に出てみたら

完全にひとりぼっちになってしまって

職場を転々とした

 

マニュアルのある職場はわりと長続きした。

最長2年。

マニュアルが存在しない職場は長続きしなかった。

最短3時間。何なら面接すらバックレる。

 

社会不適合者とはまさに私の事だ、と思いながら

約30年を生きてきた

 

発達検査を受けてみて思ったことは

「やっと私という個体を知る事が出来た」

 

他人から見た私は「見た目はめちゃくちゃ急いでるのにポンコツ

でも私は「頑張ってるのに全然頑張ってるふうに見られない」と思ってる

 

それを表に、言葉に出せない

常に頭の中には意見がグルグル回っているのに

それを言葉に出して表現することができない。

 

言語理解凹で「発達の遅れが認められる」に○が付くほどの数値で

「自分の言葉で会話が出来ない」という致命傷を抱えている。

心理士からも「SSTを受けましょう」と言われる始末。

(SST=ソーシャルスキルレーニング)

 

これから30歳を迎えるなか、

今更人間と関わる練習をしましょうって。

「私、もう手遅れじゃないですか?」と聞きたかった。

でもその言葉すら出てこなくて聞けなかった。

 

幼稚園の頃から人混みが苦手で

自分から話しかけられる人はクラスには1人もおらず

常に先生とくっついていた

今思うと人見知りで、それは社会不安障害に繋がっていく

高校生~産前、産後~2年間ほど投薬治療をするが

完治はしておらず、最近再発してきている

 

生きづらさは常に変わらない。

何なら大人になるにつれてどんどん人の目から逃げている。

発達障害者がどれほど苦しい思いをして生きているかは

誰の目にも見えないし、軽度~重度まで様々だ。

 

検査を受けることで少しでも自信がついて長所を見出せるなら

この検査を受けた恩恵は受けられるだろう。

 

社会復帰は、正直まだ出来そうにありません。

他人と折り合いをつけて働くことが怖いです。

私がいることで職場の秩序を崩したことが何度もあり

これ以上他人に迷惑をかけられないな、と感じています。

 

中には、「お前が言わなければバレなかったのに」と怒られて

私が結局仕事を辞めることになった職場もあった

 

私は「悪いことをしている、それを報告しただけだ」と思ってた

でも他人からすると「余計なこと言うな」「空気読めないバカ」

 

空気ってなんだ。難しいな。

悪いことを報告しちゃいけない空気ってなんだ。

みんな悪いことしているのか?

みんなそれを見過ごして人間は生きているのか??

私にはその空気は合わないみたい。

 

むしろ、そんな空気が分からないのが

私の良いところなのかもしれない。

 

よく言えばウソが無い素直な私。

悪く言えば空気が読めないバカな私。

他人から見た私は空気が読めないバカな私。

私から見た私は些細なことに気が付いて指摘できる私。

 

現在はパソコンで仕事を受けている。

他人と一切かかわらない代わりにお小遣い程度の稼ぎを貰う。

でも今の私にとっては誰とも喋らない日々のなかで

心に溜まる感情を吐くことが出来る唯一の楽しみでもある。

ブログとはまた違う楽しみを持って取り組んでいる。

 

人生の折り返しに立っている私ですが

宇宙人らしく居場所をひっそり探してなんとか生きています。